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めおとよろい
めおと鎧
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館 、1943(昭和18)年1月号
N1 · 挑战 · 新字新假名 · 12,130 字 · 24 页
敵兵のなかに、まさしく菊岡弥五郎の姿がみえた。そして孫兵衛のほうをちらと見た。なにか叫んだようだった。孫兵衛がふりかえったのは、ほんの目叩きをするひまであったが、その僅かなひまに敵兵がふたり襲いかかっていた。
わっと喚きながら突っかける槍を、躱わすいとまがなかった。高腿をふかく刺された。しかし刺させたままかれは相手の脇へ太刀を突っこんだ。相手は横へよろめいた、そのとき二人めの敵が斬りこんできた。その刀は、鎧の胴にあたって戞と鳴った。孫兵衛はひだりへ躰を転じようとしたが、高腿に刺さったままの槍が足にからんだので、そのままだっと横倒しになった。――しまった。はね起きようとする真向へ、敵の二の太刀がうちおろされた。かれは自分の頭蓋骨ががんと鳴るのを感じたきり失神した。
孫兵衛が我にかえったとき、すぐそばにいたのは菊岡弥五郎だった。――ああおれは弥五郎に救われたのだな。そう思った。弥五郎はかれが眼をあいたのをみてにっと微笑して、「戦は勝ったぞ」と云った、「金吾秀秋のねがえりは効を奏した、石田軍は支離滅裂の敗軍で、いま味方はひっしに追撃ちゅうだ」
孫兵衛はうなずいたまま、しばらくじっと弥五郎を見あげていたが、「貴様どうしておれを救ったのだ」