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もうぐんびはいらない

もう軍備はいらない

坂口 安吾

「文学界」1952(昭和27)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,258 字 · 16 页

青空文庫

原子バクダンの被害写真が流行しているので、私も買った。ひどいと思った。

しかし、戦争なら、どんな武器を用いたって仕様がないじゃないか、なぜヒロシマやナガサキだけがいけないのだ。いけないのは、原子バクダンじゃなくて、戦争なんだ。

東京だってヒドかったね。ショーバイ柄もあったが、空襲のたび、まだ燃えている焼跡を歩きまわるのがあのころの私の日課のようなものであった。公園の大きな空壕の中や、劇場や地下室の中で、何千という人たちが一かたまり折り重なって私の目の前でまだいぶっていたね。

サイパンだのオキナワだのイオー島などで、まるで島の害虫をボクメツするようにして人間が一かたまりに吹きとばされても、それが戦争なんだ。

私もあのころは生きて再び平和の日をむかえる希望の半分を失っていた。日本という国と一しょにオレも亡びることになるだろうとバクゼンと思いふけりながら、終戦ちかいころの焼野原にかこまれた乞食小屋のような防空壕の中でその時間を待つ以外に手がなかったものだ。三発目の原子バクダンがいつオレの頭上にサクレツするかと怯えつづけていたが、原子バクダンを呪う気持などはサラサラなかったね。