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わがせいしんのしゅうい

わが精神の周囲

坂口 安吾

「群像 第四巻第一〇号」1949(昭和24)年10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,670 字 · 32 页

青空文庫

私の家には、高橋正二と渡辺彰が毎晩泊って、私の発作に備えていてくれたが、翌朝になると、講談社の原田君も泊っていたことが分った。何かゞあったのではないかと私は思う。私の記憶に明かではないが、作品社の八木岡君も泊っていたような気がする。

伊東へ同行したのは、南雲、長畑両医師に、高橋正二と女房。渡辺、八木岡両君は後日やってきた。

伊東へきて三日目の朝であった。旅館の縁側で私と話を交していた高橋が、

「先生、だいぶ催眠薬の影響がとれてきたようですね。言葉の発音が、しッかりして来ましたよ」

催眠薬ときいて、私はドキッとした。私には、その記憶がないのである。

「言葉の発音が、そんなに変テコだったのかい」

「えゝ、ちょッと、呂律がまわらなかったです。言葉もそうでしたが、足の方が、ひどかったですね。伊東へ来た日、尾崎さんの前の河で、なんべん、ころんだか、覚えてますか」

その方は覚えていた。しかし、言葉がもつれていたという意識はない。

大井広介の娘、陽子ちゃんが遊びに来た。女房と多摩川へボートをこぎに行って、一泊した。すると翌朝、大井広介がカンカンに腹を立てゝ陽子ちゃんを迎えに来て、