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わがせいしんのしゅうい
わが精神の周囲
「群像 第四巻第一〇号」1949(昭和24)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,670 字 · 32 页
覚醒剤とアドルムを過度に服用しはじめたのは、この時からであった。東大神経科へ入院したのは二月十七八日ごろのことで、そのときは、喋ることも、歩行もできず、たゞ幻視と幻聴に苦しみつづけていた。すでに歩行も不可能であるから、兇暴期もすぎていたが、たゞ、私の忘れていないことは、一度も自殺を意志しなかったこと、たゞ生きること、そして、仕事の完成だけを考え、何よりも自殺の発作を怖れつゞけたことであった。千谷さんから、二ヶ月で必ず治してみせます、と云われたときに、私はたゞ恢復しうる感動で、胸がいっぱいであった。
こうして、四月二十日ごろ恢復退院したが、千谷さんの忠告にも拘らず、生活費を得るために、多少の仕事をせざるを得ない。どうせ仕事をするくらいなら、私はむしろ、この小説に没入した方がよかった、と、今は思う。その方が、胸の虚しさも晴れ、むしろ精神の安定を得ることができたであろうと思う。私はしかし、なるべく疲れずに、仕事をすることを考えた。そういう中途半端なものが、芸術の世界で許されるものではなく、私はテキメンに自らの空虚さに自滅したようである。
千谷さんから呉々も云われたように、当時の私はまだ恢復が充分ではなかったところへ、暑気に当てられ、決して多くの催眠薬を服用したとは思わぬうちに、春の病状をくりかえしていた。