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わがちをおうひとびと
わが血を追ふ人々
「近代文学 第一巻第一号」1946(昭和21)年1月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,546 字 · 21 页
いゝえ、とレシイナは答へた。気の毒な農民達は畑の物を根こそぎ税に納めねばならず、食べる物もありませぬ。ゼスヽ様の御名を唱へても殺されます。世の中がこのまゝのやうで宜しい筈はございませぬ。あゝ、小左衛門は絶望した。だが、何といふ女であらうか。彼は異様に新鮮な色情すらも見たのであつた。全てが分らなくなつてきた。神とは何者であるか。四郎は何者であるか。そしてレシイナよ、お前まで俺の分らぬところへ飛び立つてしまひさうな気がする。
金鍔次兵衛は長崎の二官の店でヒエロニモ四郎に洗礼を授けた当の神父であつた。
四郎は八ツの年に二官の店に丁稚奉公にあがつたが、彼はいはゆる神童で、この界隈では四五歳の四郎の筆蹟を額におさめて珍蔵する家もすくなからぬ程だつた。
十三の年に独立して、二官の店の商品、舶来の小間物類を船につみこみ、京、大坂、江戸で売りさばくために父親の甚兵衛と共に出発したが用心棒といふ以外に父親の同伴の意味はなかつた。大人よりも利巧であつたし、商才に富んでゐた。
二官の義弟の陳景は長崎の市長であつたが、四郎は当然王侯たるべき人ではあるが、世を危くする気質まで蔵してゐる、と予言した。