轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

アド・バルーン

アド・バルーン

織田 作之助

「新文学」1946(昭和21)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,390 字 · 53 页

青空文庫

ライオンハミガキの広告灯が赤になり青になり黄に変って点滅するあの南の夜空は、私の胸を悩ましく揺ぶり、私はえらくなって文子と結婚しなければならぬと、中等商業の講義録をひもとくのだったが、私の想いはすぐ講義録を遠くはなれて、どこかで聞えている大正琴に誘われながら、灯の空にあこがれ、さまようのでした。

間もなく私は瀬戸物屋を暇取って、道修町の薬種問屋に奉公しました。瀬戸物町では白い紐の前掛けだったが、道修町では茶色の紐でした。ところが、それから二年のちにはもう私は、靱の乾物屋で青い紐の前掛をしていました。はや私の放浪癖が頭をもたげていたのでしょう。が、一つには私は人一倍物事に熱中する代りに、すぐそれに飽いてしまうという厄介な性質を持っていました。いわば、竜頭蛇尾、たとえば千メートルの競争だったら、最初の二百メートルはむちゃくちゃに力を出しきって、あとはへこたれてしまうといった調子。そんな訳で、奉公したては、旦那が感心するくらい忠実に働くのだが、少し飽きてくると、もういたたまれなくなって、奉公先を変えてしまうのです。

十五の歳から二十五の歳まで十年の間、白、茶、青と三つの紐の色は覚えているが、あとはどんな色の紐の前掛をつけたのやらまるで覚えがないくらい、ひんぱんに奉公先を変えました。