轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

アド・バルーン

アド・バルーン

織田 作之助

「新文学」1946(昭和21)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,390 字 · 53 页

青空文庫

だから最初の二三時間はひどく能率を上げても、あとがからきしだめで、ほかの人夫が一日七十銭にも八十銭にもなるのに、私は三十四銭にしかならないのです。当時三度食べて煙草を買うと、まずいくら切り詰めても四十五銭はいりました。五日働いた後、私はまた線路伝いに歩きました。そして、夜が来たので、ある百姓家の裏藪のなかで野宿しました。その裏藪から、蚊帳を吊った座敷がまる見えでした。ラヂオがあると見えて、音楽がきこえます。蚊に食われながら聴いていると、やがてそれがすんで、次に落語の放送でした。が、アナウンサーの紹介を聴いたとたん、私は思わず涙を落しました。出演者は思いもかけぬ父の円団治でした。なつかしい父の声、人々は皆蚊帳の中にはいってゲラゲラ笑いながら聴いているのに、自分一人こうして蚊に食われながら、ポロポロ涙を落して聴いているのだ、――そう思うと、つくづく情けなくなってしまいましたが、しかし、文子のいる東京はもうすぐだ。そう思うと、いくらか元気が出て、泣きながら夜を明かすと、また歩きました。

東京へ着いたのは、大阪を出て十八日目の夕方でした。桔梗屋のお内儀に教えてもらった文子の住居を、芝の白金三光町に探しあてたのは、その日の夜更け。