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アンドロギュノスのちすじ
アンドロギュノスの裔
渡辺 温
渡辺温『アンドロギュノスの裔』。同一底本的分册已合并为一书。收入:アンドロギュノスの裔、可哀相な姉、或る母の話、父を失う話、花嫁の訂正、イワンとイワンの兄、恋、勝敗、少女、シルクハット、嘘、象牙の牌、兵隊の死、ああ華族様だよ と私は嘘を吐くのであった、遺書に就て、赤い煙突、風船美人、四月馬鹿、十年後の映画界、浪漫趣味者として。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,168 字 · 267 页
云いながら、その菰包みに腕をかけて、ヤッとばかりに持ち上げようとしたんだけど、さてビクともしないじゃありませんか。大の毛唐が、いくら真赤になって呻いても大盤石の如く貧乏揺ぎもしなかったわ。ところが、その中にお婆さんが、唐突にゲラゲラ腹をかかえて笑い出すと、その菰をつい剥がしたの。すると中から現われたのが、何だと思って? 荷物と見せかけたのは、郵便ポスト――だったじゃありませんか。毛唐は真逆日本のお婆ちゃんがと油断してかかったのだろうけど、四月一日であってみれば、怒るに怒れず頭を掻いて逃げて行ったわ。』
『そいつあ豪気な話だ。なる程、四月馬鹿とは、嬉しい習慣だね。そう云うことならよろしい。今日は一つその手を用いて、会社の木偶共も片っ端から落してくれるかな。』
『タイピストや、電話姫なんかばっかり落としちゃうんじゃないの?』
『まさに図星と云うところかも知れないね。』
『大人気ないわ。』
『本気になりなさんな、自分で仕込んで置きながら。万事四月一日だ。』文太郎君は仕立下ろしの春外套を羽織ると、それでも毎朝と変らぬ真心こめたベエゼを、エミ子に捧げて威勢よく玄関へ出て行きました。