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アンドロギュノスのちすじ

アンドロギュノスの裔

渡辺 温

渡辺温『アンドロギュノスの裔』。同一底本的分册已合并为一书。收入:アンドロギュノスの裔、可哀相な姉、或る母の話、父を失う話、花嫁の訂正、イワンとイワンの兄、恋、勝敗、少女、シルクハット、嘘、象牙の牌、兵隊の死、ああ華族様だよ と私は嘘を吐くのであった、遺書に就て、赤い煙突、風船美人、四月馬鹿、十年後の映画界、浪漫趣味者として。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,168 字 · 267 页

青空文庫

飛んで行ったのは――エンミイが四月馬鹿にしようと思って時計をすすませて置いたのを、気がついていながらワザといいことにして、出掛け迄黙っていたらしいことは確かだ。

疑ってみれば、疑える節々が思い当らないでもなかったのです。直ぐ会社へ電話で問い合せてみようかとも考えたのですが、夫の勤め先が休みか否か解らないでいるなんて、そんな恥しい、可哀相な女房になるのは、自尊心が許さなかったので止すことにしました。

エミ子はしょんぼりと、茶の間に坐って考え込んでいましたが、やがて帯の間に挾んだ手を抜いて、思いついたように夫の置いて行った折鞄を開けて、中味を仔細に点検してみました。昨日の夕刊が二枚と、『探偵小説全集』が一冊と、『南京鼠の合理的長命法』と云うパンフレットと、古い帝国ホテル舞踏会の案内状が一枚出て来たばかりでした。

エミ子は、それから、文太郎君が昨日迄着ていた冬外套を持ち出して、ポケットをすっかり裏返して見ました。

ところが、胸のポケットから、手巾と一緒に小さな紙片のまるめたのが飛び出して来たので、その皺をのばして見ると、それは会社の便※(「竹かんむり/銭のつくり」