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アンドロギュノスのちすじ
アンドロギュノスの裔
渡辺 温
渡辺温『アンドロギュノスの裔』。同一底本的分册已合并为一书。收入:アンドロギュノスの裔、可哀相な姉、或る母の話、父を失う話、花嫁の訂正、イワンとイワンの兄、恋、勝敗、少女、シルクハット、嘘、象牙の牌、兵隊の死、ああ華族様だよ と私は嘘を吐くのであった、遺書に就て、赤い煙突、風船美人、四月馬鹿、十年後の映画界、浪漫趣味者として。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,168 字 · 267 页
私は拒絶した。すると、『生意気な野郎だ。へんてこれんなシャッポなんか被りやがって、大きな面するねい!』と云うが早いか、メリケンサックを嵌めた手が、したたか私の顔面を殴った。私は忽ち、石道の上に昏倒し、青い帽子と共に彼等の土足に踏みにじられてしまったのである。
『君は、屹度お洒落の若い衆のように身綺麗にし過ぎていたので、青い帽子迄が、女を誑すための嗜みのように思われたのですね。』とH――氏が云った。そして、ロマンティストは、何時もすべっこく髭を剃り立ての頤を光らせていたり、伊達色の当世風に身についた新調の衣服を着たり、香水の匂いをさせたりしないことや、また道を歩きながら余り明けっぴろげに娘たちばかりを眺めたりしてはならないことを教えてくれた。
『爪垢を少しためて。――だが、汚穢しくなってはいけない。隔日位に、お湯に入って皮膚を清潔な健康色に磨くのがよろしいでしょう。』そんな注意もした。
私は段々ロマンティストの様子に慣れて来た。適度の無精髭を蓄えて、ゆったりとした厚地の服に、洗濯の行き届いた縞シャツを着て、始終ネクタイをゆるく横っちょに滑らかし加減にして、百姓持ちの様な大きな煙管を銜えることにした。