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オフェリヤごろし
オフェリヤ殺し
小栗 虫太郎
「改造」改造社、1935(昭和10)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,366 字 · 58 页
それから、父はあの夜、もう二度と帰らないと云いました。私は悲しくなって、父の胸に抱きついて、キュッとしめつけてみましたが、やはり同じ事を云って、それなり劇場の前で、別れたのが最後でした」
と孔雀は、捲毛の先についていた金雀枝の花弁を湿した口に噛ませて、じっと押し黙ってしまった。その花を、法水がスイと引き抜いて、
「たしかこの花降しは、警察の注意で、今夜からしたのでしたね。だが、これに僕は、妙な逆説を感じているんですよ。あの真に迫った殺し場を、隠そうとしたものが、却って……」
「じゃ、私が犯人だって云うんですの」
孔雀は眼をクリクリさせたがパッと口を開いて、真赤な天鵞絨のような舌をペロリと出した。
「サア見て頂戴。キプルスでは口に入れた穀粒に、唾のついていない時には、その人間が犯人なんですってね。たとえ、あの時、雪のように降って来る花弁が、私の身体を隠し了せたにしてもだわ。どうして、あの短い間に、奈落まで往復出来るでしょうか。ああ私、ほんとうは隠し通そうとしたのでしたけど、思い切って云ってしまいますわ。実は、父を見たのです。見たどころかいきなり後から脊を打たれて……」