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オフェリヤごろし

オフェリヤ殺し

小栗 虫太郎

「改造」改造社、1935(昭和10)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,366 字 · 58 页

青空文庫

「なに、脊を打たれて……」

熊城は莨を捨てて、思わず叫んだ。孔雀は左眼をパチリと神経的に瞬いて、

「よく、オフェリヤの棺と間違えますが、衣裳部屋にある櫃の中から、もう一着、亡霊の衣裳を取り出して来いと云われました。私は初日から、雑夫の中に父が混っているのを知っていたのです。だって、喰べ物を口にするとき、辺を見廻わすなんて、誰が父以外にあるもんですか。それで、私は最初断りましたの。すると、私が着換えをしていると、またやって来て、あの大きな影法師に愕とした途端、いやというほど拳で脊を打たれました。ですから、右手の扉の方に逃げようとすると、その前へ立ち塞がって、とうとう私は、衣裳盗みをさせられてしまったのです。その時の痛さと云ったら、左の手首にずうんと響いた位ですわ」

そう云って、取り出した、莨の烟の中で、孔雀は裸の腕を擦り始めた。

「すると、それは何時頃ですか」

法水はその横顔をチラリと見て、事務的な訊き方をした。

「僕は円錐形の影が、一体何処を指していたか、知りたいのですよ。貴女はミルトンの『失楽園』の事を、誰からかお聴きになった事がありますか。これは、天上から見た地球の話ですが、太陽の蔭になった方には円錐形の影が出来て、それが天頂に達すると夜半。