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オフェリヤごろし

オフェリヤ殺し

小栗 虫太郎

「改造」改造社、1935(昭和10)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,366 字 · 58 页

青空文庫

そうでなければ、仮令犯行が奈落で行われたにしてもだ。誰しも一応は、あの震動が孔雀の擾乱手段ではないか――と考えるだろうからね」

今までも、あの不可解な震動については、妙に法水は沈黙を守っていた。その時も、彼は別の事を考えていたらしく、いきなり検事を振り向いて、

「ねえ支倉君、君が知ろうと欲している、心理上の論理だが、一つ僕は、その確固たるものを握っている。だが、九十郎と幡江は、おなじ同肉同血の親子じゃないか。その中で、たとえどのような動機があるにしてもだ。ああも容易く、自然の根や情愛が、運び去られてしまうものだろうか……」

と暫く莨を持ったまま、ポツネンとしていたが、その時喚ばれた、ルッドイッヒ・ロンネが入って来た。

ロンネは鳥渡見ただけでは、三十前後にしか見えないけれども、彼は四十を幾つか越えていて冷たい片意地らしい、尖った鼻をした男だった。そして、入るとすぐ、故意とらしい素振りをして、

「法水さん、貴方ほどの方が、不在証明なんて云う、運命的な代物を信じようとはなさいますまいね。僕はこの通り、不在証明もなければ、空寝入りしようともしませんよ」

「いや、運命的なのは、オフェリヤ狂乱そのものじゃありませんか」