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オフェリヤごろし

オフェリヤ殺し

小栗 虫太郎

「改造」改造社、1935(昭和10)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,366 字 · 58 页

青空文庫

そこと六時との間が、ほぼ九時になると云うのです。つまり、童話の神様が見る時計なんですよ」

「ああ、あの悪魔がやって来た時のこと……」

孔雀はちょっと、白い頸窩を見せたが、

「最初は多分三時前後だったでしょう。それから二度目に来た時は、正確に憶えていますけども、それが六時十五分だったと思いますわ」と云って、放逸な焔を眼一杯に輝かせた。

そして桃を包んだそのもののような、生毛が生えている腕を露わに投げ出して、それには打たれても避けそうもない、まるで身体を擦り付けて来るようなものが感ぜられた。

然し、孔雀の垂れた睫毛の間が、しんみりと濡れて来て、

「もう訊く事がないのなら、今度は私の話を聴いて頂戴。ほんとうに法水さん、つくづく今度と云う今度は、役者が嫌になりましたの。もうこの興業が終ったら、いっそ生活を変えて、私、子供でも生んでみたくなりましたわ」

孔雀が去った後でも、何やら四肢五体を、ほぐらかすようなものが残っていた。法水はプカプカ莨を灰にしながら、黙考に耽けっていたが、熊城は絶えず揉手をしながら、悦に入っていた。

「法水君、結局君の智能が孔雀を救った事になるじゃないか。