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チェーホフのたんぺんについて
カシタンカ・ねむい 他七篇
神西 清
神西清『カシタンカ・ねむい 他七篇』。同一底本的分册已合并为一书。收入:チェーホフの短篇に就いて、チェーホフ序説。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 46,418 字 · 92 页
今日の文化はこの努力の端緒にすぎない。いっぽう宗教運動はどうかと云うと、それは既に生命を終らんとしているものの終末なのだ。……
チェーホフがドストイェーフスキイに全然興味をもたなかったことは、あらためて断わるまでもないだろう。反撥するだけの関心すらなかったことは、この重要な作家についてのまともな言及が、彼の手紙の中にほとんど見当らないところからも知られる。一八八九年版のドストイェーフスキイ全集がチェーホフの蔵書目録に載っているが、恐らくそれを買いこんだ直後のものと思われる感想は、――冗長だ、はったりが多い、などという数語にすぎない。トルストイになると、当時まだ健在で、ひどくチェーホフを可愛がってくれた関係もあるので、別の星の住み手として放って置くわけにいかなかったらしい。だからと云って、彼はこの老人の前でいつも大人しくしていたのではない。こんな挿話がある。――トルストイが「カント的な見方で」不滅を認めて、人間も動物もある神秘な原理(理性、愛)によって生きていると主張したのに対し、チェーホフは、その原理とやらは何かどろどろしたジェリーの塊りみたいに思えてならない、じぶんの自我や個性や意識がそんな塊りと融合するのが不滅なら、平に御免をこうむると言い放って、ヤースナヤ・ポリャーナの聖者を唖然たらしめた。