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チェーホフのたんぺんについて

カシタンカ・ねむい 他七篇

神西 清

神西清『カシタンカ・ねむい 他七篇』。同一底本的分册已合并为一书。收入:チェーホフの短篇に就いて、チェーホフ序説。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 46,418 字 · 92 页

青空文庫

、「ユリシーズ」等々の名にかくれて、七年間に四百篇を超えるユーモア短篇、小品、雑文、通信記事の類を、いろんな滑稽新聞や娯楽雑誌に書いた。学資かせぎと一家の扶養が本来の目的であったが、勿論この濫作には惰性やジャーナリズムの要求が有力に働らいていたことは疑えない。……これがアントーシャ・チェーホンテ時代のあらましである。通説によれば、この時期は彼の無自覚な嬉々とした小鳥の歌声のような時代だったというのだが、この推量の荒唐無稽はあえて当時の彼の手紙を引合いに出すまでもなく、一見して明らかだろう。それは笑いの強制労働であり、語弊さえ厭わないなら「売笑」と呼んで差支えないくらいだ。ゴーゴリの場合も、その天成の笑いは若年にして北の空気によって著しく変質せしめられたが、チェーホフの場合はおそらくその比ではなかったにちがいない。勿論その持って生まれた笑いの衝動そのものは消え失せるはずもないのだが、笑いの性格は殆ど旧態をとどめぬまでに歪まされたと見るのを至当とするだろう。

のみならずチェーホンテ時代の初期すでに「チェーホフの哀愁」が始まっていたことを証拠だてることも、決してむずかしい仕事ではない。