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カストリしゃじけん

カストリ社事件

坂口 安吾

「別冊オール読物」1948(昭和23)年9月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,043 字 · 21 页

青空文庫

「ウン、やっぱり、なア。今となっては、あんなカッコウしてみるより、仕様がねえだろうな。だけどさ、ウチの社長は、あれが年ガラ年中のカッコウなんだから、こりゃ、つまり、先天的、没落者の姿なのかも知れねえなア。二十万円、有りゃ、いゝんだろう。二十万円ぐらい、オレがだしてやりたいけど、もう、金歯はねえし、もし、みんなが女だったら、オレが命令を下して、そろってパンパンに出動して、二十万円ぐらい、一週間で稼いじゃうけど、ママならねえよ、なア。でも、なア、ワッハ、悲しいよ、なア、あの姿、ワッハ、アレ、二十万円ないという姿なんだ、ひでえよ、なア、ワア」

「なにィ」

社長の先生、ジロリと目をむく。それだけである。さすがに、顔色も変らない。

「エッヘッヘ。きこえちゃったか。気の毒だよ、なア。だけど、先天的に、どうも、仕方がねえや。問題は、オレは、先天的なんだと思うんだ」

「まさに、片彦の云う通りじゃよ」

と、社長の先生、悠々と、然し、いさゝか、悲痛である。

「要するにだよ。オカネというものがなければ、オレが社長であるという意味はない。しかるにじゃ。オレは今日まで、借金のために奔走これつとめ、辛くもなにがしの借金をカクトクすることによって、この椅子にこうして坐って、かくの如くに足を机の上にのッけていたわけじゃよ。