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ガラマサどん
ガラマサどん
佐々木 邦
「キング」1930(昭和5)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,079 字 · 202 页
「一同は特に東洋美術に興味を持っていまして……あなたの御蒐集の書画骨董……」
と代表者が申出た。多分拝見したいというのだろうと思っていたら、果して、
「お安い御用でございます」
と社長が応じた。
「突然伺いまして……」
「いや、一向。序に工場を御覧になりますか?」
「私達は禁酒国のものでございますから、醸造業は拝見致しても参考になりません」
「国産ビールは酒ではありません。清涼飲料です」
「成程」
「設備は東洋一」
と社長は宣伝を始めた。
「しかし時間がありませんので……」
「それでは直ぐに宅の方へ御案内申上げましょうか?」
「甚だ恐縮でございますが……東洋一の御蒐集……」
と代表者は先年社長が外遊の折吹いて歩いた法螺を信じ切っていた。
社長は一行を新邸へ案内した。庶務課長と松本さんと私、それに定兼君がお供をした。定兼君と私が通訳の労を執る。書画骨董の説明はナカ/\骨が折れた。社長は就中家重代の国光に一行の注意を呼んで、
「これは私の先祖の大名が朝鮮征伐の時使ったものです」
と言った。
「ひらりと見えし刀の影、首は前にぞ落ちにける」
と振り被って見せた。西洋人にまで義太夫を語って聴かせたいのだから始末に負えない。