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ガラマサどん
ガラマサどん
佐々木 邦
「キング」1930(昭和5)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,079 字 · 202 页
「上中下の三冊に纏めて貰いたい」
「はゝあ」
「明治大正昭和に亙って、こんな桁外れの男が真の少しばかり国家に尽したということを聊か後世へ伝えたいと思ってな」
「はあ」
「二三年かゝって、ゆっくりやって貰いたい。粗製濫造じゃ困る」
「心得ました」
「偉人伝というと語弊があるが、大体その意気込で宜しい」
「はあ」
「罷り間違えば、現代の青年を多少裨益しないとも限らない」
「いや、社長の御一生は後進の模範でございます」
「そんなこともなかろうが、読み方によっては、千載の後懦夫を蹶起せしめるかも知れない」
「はあ」
「君の筆なら必ず相応のものが出来るよ」
「さあ。自信はありませんが、題材が題材でございますから、或は書き好いかとも存じます」
「早速心掛けてくれ給え」
「はあ」
「種々と註文があるから、斯うっと、今晩、何うだね? 宅へ来てくれまいか?」
「伺います。何時頃がお手空きでございましょうか?」
「さあ。七時過、いや、八時頃、御足労を願おうか?」
「承知致しました」
「それでは」
「失礼申上げました」
「御苦労でした」
と社長は頷いたが、
「熊野君、一寸」
と思い直した。
「はあ」
「君に雅号のないのは我輩の自叙伝を書く上に何うも面白くない。