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ガラマサどん

ガラマサどん

佐々木 邦

「キング」1930(昭和5)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,079 字 · 202 页

青空文庫

それも取るの取らないのって大騒ぎじゃありませんか?」

「妙なことを云い出したね」

「全くお気の毒に思っているんです。先生」

「何だ?」

「将来重役に出世したら、二三万現ナマで持って上ります」

「それだから君は気があるってのさ」

「いや、真剣です。その時は是非お納めを願います」

「志があるなら、学校へ寄附し給え」

「仕方がないですな」

と私は諦めた。衣食足って礼節を知る。私は先生が死んだら香奠を沢山出すことに決心して辞し去った。しかし先生も抜け目がない。翌日、維持会加入の勧誘を活版刷りの手紙で寄越した。

私は三好さんから社長の新邸へ廻った。ガラマサどんは大仕掛で、先頃から洋間の一つを自叙伝編纂室に当てゝいる。私はそれへ通ったが、一時間待つのか二時間待つのか例によって分らない。念の為め、女中に、

「お忙しいようなら、又伺いますから」

と都合を訊いた。

「御令息さまが見えていらっしゃいます」

「それじゃこのまゝ失礼致しましょう」

「いゝえ、私が叱られますから」

と女中は取次に行って、

「お目にかゝりたいと仰有いますから、何うぞ少時」

と復命した。御親子御対面中なら長かろうと私は覚悟したが、案に相違して、