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ガラマサどん

ガラマサどん

佐々木 邦

「キング」1930(昭和5)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,079 字 · 202 页

青空文庫

と云って大威張りだ。我輩は契約書や請求書を認めて、こゝへ一つと姓名の下を指さす。大将『よし。こゝか? スポン』と掛け声をして印を捺す。実に景気の好い人だった」

「大分変っていますな」

「迚も当り前じゃない。しかし頭の好い人だったよ。何も彼も曲りなりに分っていた。自分は無学文盲でも、我輩には勉強を勧めてくれた。『君は他の手代と違う。これから出世をするんだから、学がないといけない。英学をやりなさい。英学をやって独逸の技師に使って貰うのが一番早道だ』と言って、夜学へ通わせてくれた。こゝが老人らしいところさ。西洋は独逸でも仏蘭西でも英学だと思っていたんだね」

「成程」

「しかしその英学で我輩は独逸人に知己を得たんだから面白いじゃないか?」

「はゝあ」

「君達も知っている通り、この会社は元来独逸人が創めたんだからね」

「はあ」

「斯う考えて見ると、松本君のお祖父さんは我輩の大恩人さ」

「先刻のコロンバスのお話のお坊さんの役でございますな」

「いや、三年間世話になったんだから、あれ以上さ。しかし松本君」

「はあ」

「我輩が斯う思っていても、君は君だ。増長しちゃいかんぜ」

「大丈夫です」