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ガラマサどん

ガラマサどん

佐々木 邦

「キング」1930(昭和5)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,079 字 · 202 页

青空文庫

と妻は未だ第一印象が抜けない。

私は三好さんの忠告に従って、大いに上へ努めている。上といっても、私達の地位では課長級までしか手が届かない。社長や重役には社内で行き会った時、最敬礼をする丈けだ。私に限らず、すべて下積みは此方から咫尺して真価を認めて貰う機会がない。それは課長級の壟断するところとなっている。この故に彼等はドン/\出世する。此方はいつまでも取り残される。

「社長や重役の家へは伺わなくても宜いんですか?」

と私は新任早々香川君に訊いて見た。

「年賀に行く丈けです」

「普段は御無沙汰ですか?」

「えゝ。全く交渉がありません。しかし社長の所へは近々機会がありましょう」

「これは有難い。何ですか?」

「令夫人が御病気です」

「お見舞いですか?」

「いや、お葬式です。随分長いですから、もう最近でしょう」

と香川君は待っているようだった。

「僕達は存在を認められていないんですな」

「そんなことはないでしょう。チャンと俸給を貰っていますから」

「それは然うですけれど」

と私は気がついて控えた。こゝだ。相手構わずに不平を言うなと三好さんから戒められている。

香川君とは机が並んでいたから、直ぐ懇意になった。