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キドこうか
キド効果
海野 十三
「新青年」1933(昭和8)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,298 字 · 25 页
たちまち轟々とひどい隧道内の反響だった。明るい室内の光線が急に曇り、黒インキがどッと流れだしたように暗闇が押しよせてきた。
「ああ」
誰かが低い声で叫んだ。
「ああ、電灯が点かない……」
別の声が呻吟いた。
矢のように走り去る光線だった。僅かに残光が窓枠の四角な形を切り出していたが、それも吸い取紙で吸い取られるように薄れていった。そして遂に黒インキのような絶対暗黒がやって来た。その絶対暗黒という魔物は、尚も恐ろしい力で室内の空間を圧し拡げていった。
レールの上に狂奔乱舞する車輪の殷々たる響が耳底を流れてゆく――それだけのことの感覚で、乗客たちは自分が生きているということを辛うじて認識した。
しかし正確にいえば、この間自分の生きていることを既に認識し得ない乗客が一人あったのだ。
「ウーム」
という低い呻り声を耳にした者は、かなりにあった。
はッ――。
と思う間もなく、ガーンと厚い鉄板を一つ叩きつけたような音がして、それに引続き遠くの彼方へ地震が動いてゆくようなとでも云うより外に云いあらわし方のない気持の悪い振動が、ゴトゴトゴトと向うの方へ遠のいていった。