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ケーテ・コルヴィッツのがぎょう

ケーテ・コルヴィッツの画業

宮本 百合子

「アトリエ」1941(昭和16)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,607 字 · 22 页

青空文庫

六枚つづきの版画「織匠」は、ケーテ・コルヴィッツの代表的な大作であるばかりでなく、彼女の複雑な資質をそのすみずみまで示している作品として、歴史的な価値をもっている。

ケーテが、ベルリンの自由劇場に上演されたハウプトマンの「織匠」を観たのは一八九三年(明治二十六年)二月のことであった。当時ドイツは、近代資本主義の国家として生産上の立おくれを急速にとり返そうとする貪慾な資本家、地主に対して、労働者の組織とその運動とが全国にひろまり、ビスマークのきめた「社会主義者弾圧法」もついに一八九〇年で惨酷な権威を失わなければならなくなっていた。マルクスの共産党宣言は一八四八年につくられていたし、ベーベルは「婦人論」を一八七九年に書いていた。ハウプトマンの「織匠」はドイツのシレジアにおいて、国家、資本家、地主と三重の重荷を負わされている「織匠」が耐えかねて反抗した、その事実を主題としたものであった。社会が自由と解放を求める高揚した雰囲気の中で、良人カールとともに、朝から夜まで勤労しながら、ぬけきれない不幸に置かれている多数の人々が、生きるためにどう闘っているかということを目撃しているケーテ、そして、その感情をともに感情としているケーテにとって、「織匠」