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ケーテ・コルヴィッツのがぎょう

ケーテ・コルヴィッツの画業

宮本 百合子

「アトリエ」1941(昭和16)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,607 字 · 22 页

青空文庫

は震撼する感銘を与えたと思われる。

版画集「織匠」ができ上ったのはその芝居を観てから四年たった一八九七年である。ケーテはその間にベルリン郊外に住んでいたハウプトマンにも一度会いに行ったりしている。「織匠」の作者ハウプトマンがケーテからうけた印象は、露のあるバラの花のように新鮮な若い女性であるということと、非常につつましく自分の芸術については一言も語らず、しかもどこかに人の注意をひくものをもっている婦人であった、といわれている。

「織匠」を観て深く刻まれた感動を、ケーテが四年の間じっと持ち続けて、ついに作品にまとめたということは、ケーテという婦人画家の天質の一つの特質を語るものではないだろうか。モティーフを、自身の感情の奥深くまで沈潜させ、すっかりわがものとしきらなければ作品として生み出さない画家、決してただ与えられた刺戟に素早く反応して自分の空想に亢奮したままに作画してゆくような素質の芸術家ではなかったこと、これはケーテにとって最も貴重な特質の一つである重厚さであった。

六枚つづきの「織匠」の後半、とくに第三枚目「相談」は、おどろくべき力でそこにいる四人の男たちの全生活の本質とその精神と肉体とが示している歴史的な立場を描き出している。