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ゴールデン・バットじけん
ゴールデン・バット事件
海野 十三
「新青年」1933(昭和8)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,946 字 · 46 页
よくよく見るとそれは線というよりも切れ目のように思われた。
(オヤオヤ、この銀玉はインチキかな)
そう思って私は手を伸しかけたとき、いきなり私の洋服をグッと引張ったものがある。はッと思って見廻わすと、引張ったのは、紛れもなく帆村だった。丘田医師は、脚立の上にあがって、毒劇薬の壜をセッセと下していて、それは余りに遠方に居たから、私の洋服を引張ったのは帆村の外には無い。
――とにかく私は気がついて、銀玉を見ることを停めてしまった。
「もう、その辺でいいですよ」帆村は丘田医師に声をかけた。
「もういいですか」
「そこで鳥渡お尋ねいたしますが」といって帆村は鉛筆で数字を書き入れていた紙片を取上げて丘田氏に云った。「パントポンの現在高が、すこし合いませんネ」
パントポンというのはモルヒネ剤であるが精製した上等のものだった。
「そんなことは無いでしょう。よく調べて下さい」
「いや確かに合いませんよ。警察の方に報告されている野間薬局売りの数量と合わんですよ」
「そりゃ変ですネ。少いということは無い筈なんですがネ」丘田医師の眼は自信あり気に光っていた。
「そうです。少くはないのです。