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ゴールデン・バットじけん
ゴールデン・バット事件
海野 十三
「新青年」1933(昭和8)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,946 字 · 46 页
少いのはまだ始末がいいと思うんですが、現在高が非常に多すぎる……」
「多すぎるのは、いいじゃないですか」
「困るんですよ」と帆村はパントポンの壜に一眄を送りながら云った。「なにか他のモルヒネ剤で間に合わしたために、パントポンの数量が残っているのじゃありませんか。例えばヘロインとか……」
「ヘロインですって、ヘロインみたいな粗悪なやつは私のところでは使っていませんよ」
「ではこの儘にして置きましょう。もう外に無いでしょうネ」
「ありませんとも」そういった丘田医師の顔は、心持ち蒼かった。
「では一つ、投薬簿の方を見せて下さいませんか」
「投薬簿ですか。そうです、あれは向うの室にあるから取ってきましょう」
そういって丘田医師は立った、帆村は私に跟いてゆくようにと、目で合図をした。
丘田医師は不機嫌に診察室へ飛びこんだ。そしてチェッと舌打をしたが、そのとき後からついていった私が扉に当ってガタリと音を立てたものだから、彼は吃驚して私の方を振りかえった。その面は、明かに不安の色が濃く浮んでいた。
投薬簿は直ぐ見付かった。調薬室へ引返してみると、帆村は前とはすこしも違わぬ位置で、また別の劇薬の目方を測っていた。