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ジャーナリズムのこうろ

ジャーナリズムの航路

宮本 百合子

「日本読書新聞」1949(昭和24)年10月26日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,842 字 · 6 页

青空文庫

そこに近親感もある。日本の伝統的な皇族への感情の習慣は、ナンセンスそのものを通じて、偶像を否定しきっていない心理を温存させてゆく。笑いや優越感をとおって屈従に近づけられてゆくのである。

ヴァイニング夫人の「皇太子の教育」と題される文章が「皇太子殿下の御教育」と日本化された翻訳で『文芸春秋』に発表されている。このなかに彼にとって、日本にとって悲劇的な一節がある。皇太子が、教室で、将来何になりたいかという質問に答えて「私は天皇になる」と答えたという前後のくだりである。私は天皇になる――十五歳の少年にとって、これは何と自働的で無人間・無社会的、そして無歴史的な固定観念だろう。天皇というものの内容・機能の現実については何も知らされていない少年が空虚な絶対性をもって鋳出されて来ている。ヴァイニング夫人の筆致にも抑えられたおどろきがある。この悲しいあき壜のような絶対感、責任感が、どんな社会的実体でつめられてゆくか。ジャーナリズムが無関係だとは云えまい。風よけの大名屏風のように、そのときどきの折りたたみ工合でもち出されるものをただ手つだってかつぐだけでジャーナリズムの任務が果されているとは考えられない。