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ジャーナリズムざっかん

ジャーナリズム雑感

寺田 寅彦

「中央公論」1934(昭和9)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,682 字 · 21 页

青空文庫

そういう出版物を経営し、またその原稿を書いて衣食の料として生活している人がジャーナリストであり、そういう人の仕事がすなわちジャーナリズムだとある。手近な字引きで引いたところではたったこれだけの意味しか書いてないのである。しかしきょうこのごろ日本でいわゆるジャーナリズムという言葉には、これ以外にいろいろ複雑な意味や、余味や、後味や、またニュアンスやがあってなかなか簡単に定義しひと口に説明することはできないようである。人に聞いてみても人によっていろいろと多少は解釈がちがう、のみならずまた同一人でも場合によっていろいろちがった意味にこの言葉を使うことがあるようである。文章の中に出現しているのでも前後関係で意味や価値にずいぶん大きな開きがあるようである。誠につかまえどころのない化け物のようなものであるが、ともかくもいわゆるジャーナリズムと称する「もの」があることだけは確実な事実である。ただ頭としっぽがどうもはっきりつかまえにくいだけである。このつかまえにくい頭としっぽをつかまえようというのではないが、世間にうとい一学究の書斎のガラス戸の中からながめたこの不思議な現象のスケッチを心覚えに書きとめておこうというのである。