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ジャーナリズムざっかん

ジャーナリズム雑感

寺田 寅彦

「中央公論」1934(昭和9)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,682 字 · 21 页

青空文庫

ジャーナリズムの直訳は日々主義であり、その日その日主義である。けさ起こった事件を昼過ぎまでにできるだけ正確に詳細に報告しようという注文もここから出て来る。この注文は本来はなはだしく無理な注文である。たとえば一つの殺人事件があったとする。その殺人現場における事件の推移はもちろん、その動機から犯行までの道行きをたとえ簡単にでも正確につきとめるためには、実は多数の警察官や司法官の長日月の精査を要し、しかもそれでもなかなか容易にはすみからすみまで明白にしにくいのが通例である。それを僅々数時間あるいはむしろ数分間の調査の結果から、さもさももっともらしく一部始終の顛末を記述し関係人物の心理にまでも立ち入って描写しなければならないという、実に恐ろしく無理な要求である。その無理な不可能な要求をどうでも満たそうとするところから、ジャーナリズムの一つの特異な相が発達して来るのである。

この不可能事を化して可能にする魔術師の杖は何かと調べてみると、それは、言わば、具体的事実の抽象一般化、個別的現象の類型化とでも名づけるべき方法であると思われる。

殺人事件というものが古来一つもなかったらどうにもならない話であるが、幸か不幸か昔からありとあらゆる種類や型式の殺人事件の数が実におびただしい多数に上っており、そうしてそれらの一つ一つ