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ジロリのおんな

ジロリの女

坂口 安吾

前半「文藝春秋 第二六巻第四号」1948(昭和23)年4月1日、後半「別冊文藝春秋 第六輯」1948(昭和23)年4月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,597 字 · 102 页

青空文庫

私自身が昔から人をジロリと見る癖があったというが、そういうジロリの意識の苦しさが、つまり今では私のノベツの時間のような、現実というものにたゞ物的に即している苦しさ冷めたさで、心というものが、物でしかないようで、それが手ざわりであるような自覚についての切なさであった。

それはまさしく不惑なのである。惑うべからざる切実な現実感覚なのである。

私は自分の子供でも、やっぱり、ジロリとみる。そして、それが、私の心の全部であるということが、ハッキリとわかった。むろん女房に対してもジロリであり、金龍に対しては、これは昔からジロリ対ジロリによって終始している関係であった。すべてがジロリであった。そのほかには、何もない。そういうことがハッキリしてきた。この発見は、せつない発見であった。発見というものではない、それが現実の全部であるという切実な知覚であった。

日本は負けた。サンタンたる負け景色であるが、私の方は、それどころじゃない。もっとサンタンたるもので、まるでもう、心には一枚のフトンはおろか、ムシロもなく、吹きさらしだ。

私はインチキ新聞の社長であった。インチキといっても恐カツなどやるわけじゃない。