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「近代文学 第四巻第一一号」1949(昭和24)年11月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,635 字 · 14 页
チエホフだと思った。チエホフって奴は永遠の青年だね。フロイドなんかも逆に考えてそう言えるね。福田恆存もそういっていた。真善美なんて過程と段階の区別はなくなって来るものなんだ。気狂病院に居るとよくわかるがね、あそこの医者は皆そういう場所に居るんだ。彼等は人間を見失うところにいる。狂人の世界は、全く動物の世界と変りがない見たいなものだからね。だからどうしても人間を探さなければいられない。従って拠りどころを見つけるために宗教的になるんだが、ボクは言うんだ、そういう人間のギリギリ結着の場所はむしろ文学の中なんかにあるんじゃないか、チエホフなどよんじゃどうですか、とね。無論ボクは宗教にも文学にも人生にも救いなんか求めてはいない。
小林秀雄はボクとは逆でね、だからあんなに骨董などいじっている。あいつはバカだよ。文学や骨董に救いがあると思ってやがるんだから。あと十年も経つとボクも彼と同じように骨董いじりをするようになるから、まあ見てろ、と彼は言うが、ボクは絶対に骨董なんかいじらんよ。
但し、ボクは現実的なことは考えている。世の中の貧乏とか社会制度の欠陥とかはね。