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ソヴェトぶんだんのげんじょう
ソヴェト文壇の現状
宮本 百合子
「綜合プロレタリア芸術講座 第一巻」内外社、1931(昭和6)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,896 字 · 58 页
それから腹が立って来た。これがソヴェトの作家たちのやっていることか? ブルジョア国のカフェーと、どうちがう?――田舎くさいだけだ。しかも、みんな平然と、特に自分たちをひきつれた一行は或る権威さえもってるらしい風でそのなかにおさまっている。
地下室のむれっぽい空気の中にあるのは「過去」だ、過去しかない。そう感じた。非常に不安になった。ソヴェトへこういうものを見に来たんではないと思った。湯浅と自分とは到頭二人っきりで先へその地下室から出て来てしまった。
モスクワの細かいサラサラした一月の雪が、アーク燈に照らされ凍って真白な並木道に降っている。橇で夜ふけの街をホテルへ帰った。――
二年たった。一九三〇年だ。「ゲルツェンの家」の門をはいって行くと、右手の庭に屋外食堂が出来ている。雨のふる日、椅子は足をさかさに立てて軒の内、テーブルの上へかたづけられている。が、今は、元の講堂が、作家たちの普通の食堂になっている。各作家団体の事務所はもとのままだが、地下室は閉鎖された。
食堂の入口二箇所に小机を前においた女がいる。一人の方に、自分の所属団体の名と姓名を記入して貰う。