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だんせにーのきゃくほんおよびたんぺん

ダンセニーの脚本及短篇

片山 広子

「時事新報」1921(大正10)年6月8日~10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,720 字 · 6 页

青空文庫

「女王の敵」の如きものでなく、彼の甘にがいユーモアが十分に出ている「旅宿の一夜」「山の神々」「光の門」の三つが舞台には割合に成功しそうに思われる。最長篇「神々の笑い」の中に皇后と侍女たち及び三人の貴婦人が出て来る「女王の敵」に女王及び侍女が出る「アルギメネス王」に四人の妃が出て来る「アラビヤ人の天幕」にジプシイの女が出る、その他には一人の女も出て来ない。以上並べた中でも「女王の敵」の女王だけが主要人物で、ほかのはただ色ざしに出されている。ダンセニイの書く夢の国の空気には人間のにおいのする女は生存し得られない為であろうけれど、日本の舞台に上演する段になると、これが面倒の一つだろうと思われる。

花柳氏一派及び友田氏一派が共に「アラビヤ人の天幕」を選んだのはエズナルザが程よい役である為もあろうが、日本語に移して、あの脚本の夢と詩が傷つけられることを私は恐れている、沙漠の砂の一つ一つに充ちている寂しみを舞台の上に漲らせることは可成の難事ではあるまいか。どうしても、「アラビヤ人の天幕」は詩人の夢である。演出者は安価な感激や和製の技巧を捨て、せめてその刹那だけでも心からの詩人になろうとしなければならぬ。