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だんせにーのきゃくほんおよびたんぺん

ダンセニーの脚本及短篇

片山 広子

「時事新報」1921(大正10)年6月8日~10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,720 字 · 6 页

青空文庫

【三】

【三】

かの駱駝追ベルナアブの如きは沙漠の砂と風とに教育された立派な詩人で、そのゆめは王冠と力とであった。この人を安っぽくすると、王とジプシイの女も安っぽくなる、そして脚本全体が小さな物になってしまう。王と駱駝追とが交換する二人の夢はその重みがかなり等しいほどの物でなくてはなるまいと私は思う。私はあの脚本を始めて読んだ時、ひょっとかして先代の王の血を受けたかも知れない若い野心家の駱駝追に深い興味をひかれて読んだ。まだ誰の芝居も見ないから、これはただ私の老婆心でいうのである。

作の巧拙は措いて、アルギメネス王が地から掘り出した青銅の剣に祈るところは力づよく私の心を引いた、作者は――光の門は舞台では成功したが、私はあまりあの作を好まない、その後アルギメネスを書いた時、始めて自分の故郷の言葉で書くことが出来た、故郷とは私の生れた国の愛蘭の意味ではない…………と云っている、米国あたりの評論家は大変にアルギメネスを悪くいうが、悪くてもまずくても、ダンセニイ自身のにおいが最も強く出ているのは「山の神々」に次いでこの作であるように思われる。

ダンセニイは米国にこそ大に歓迎されているが、彼の英本国に於てはあまり流行児ではないようである、我々日本人が彼をうけ入れても受け入れなくとも、それはどうでもよい。