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ちっぽけなおの

チッポケな斧

坂口 安吾

「新潮 第四八巻第八号」1951(昭和26)年7月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,233 字 · 21 页

青空文庫

庶民の多くは安きにつきたがり昔をなつかしむものであるから、それによって選ばれる政治家、多数党というものは、国民の過半数の代表者には相違ないが、決して真理を代表するものではない。時の民意の多数を制するものが真理ではないのである。民衆の多くは保守的なのが自然で、より進歩した生活の実効を知らずに、旧習への執着だけで進歩に反対するものであるから、いかに多数の民意を代表するのが政治のタテマエでも、それだけだったら生活の進歩も向上もない。多数の民意によって選ばれた政治家でも、民意を行うと共に、進歩的な指導力も必ずなければならぬものだ。

特に今は、敗戦を齎したもろもろの禍根を追及して後世の遺産たるべき新しい日本を再建する空前の機会ではないか。民意に添いつつも、必ずしも民意に添わぬ手術の多くを行わねばならぬ時代である。この時代に処する当然の心得はそれだ。一面には民意を代表しても、一面には民意に添わぬ真理を代表することを時代の心得とすべきである。

民意に添うか、真理に添うかということの規準は、そのいずれを執る方が旧日本の愚をくり返さぬかという程度をもって心棒とすべきであろう。