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ツルゲーネフのいきかた

ツルゲーネフの生きかた

宮本 百合子

「文化集団」1934(昭和9)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,189 字 · 22 页

青空文庫

関係を知らねばならない。

しかしながら、現実の生活において何が彼等を斯くもはなれ難く結びつけたかといえば、それはツルゲーネフやクロポトキンが文学的には書く価値のないものと考えた、日常の仕事を中心とする生活環境そのものではなかったろうか。

ツルゲーネフが二十を越したばかりのロシアの富裕な貴公子で、天性優美と不決断とを持った西欧主義者として当時ペテルブルグの華やかな社交界に余暇の多い日々を送っていたればこそ、舞台以外のヴィアルドオ夫人と親しくする機会をもち、彼とは対蹠的であったらしい夫人の溌剌とした性格、処世術の魅力によって、生涯を支配されるに至ったのである。

恋愛において個性が燃え立つのは、恋愛があらゆる場合、その個性の属する社会層の思想、習慣等の集約的表現だからである。様々の階級的感情、社会の一般的情勢に制約されつつ、或る者は恋愛をモメントとして自己の階級から脱離し、或る者は一層かたくそれと結合する。その相剋の間に、各々の個性が最も覆いもなく独特の調子、やりかたをもって発動し、それを大きく社会的に観れば自分の所属する階級の崩壊へ、或は前進への必然の道を遂行するのである。