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ツルゲーネフのいきかた
ツルゲーネフの生きかた
宮本 百合子
「文化集団」1934(昭和9)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,189 字 · 22 页
ツルゲーネフは、恋愛を制約する社会性というものの力を洞察し得なかった。当時のロシアの民衆の生活はゴーリキイの幼年時代によって明らかなように野蛮な暗い農奴制ののこりものである家長制に圧しつけられていた。農民、労働者の間に個性の自由や恋愛ののびのびした開花は無智と窮乏によって、貴族と小市民との間にあっては封建的なしきたりで、それが凍らされていた。
個性の解放を欲求した面でツルゲーネフは全く生々しい若いロシアの要求を表現したのであるが、それを恋愛の行為にだけ納めて自分から納得したところに、彼の徒食階級の作家らしい非現実性が見られるのである。
ツルゲーネフの見かたに従うと、或る一つの恋愛がこの社会にあって歴史の発展とどういう関係で結ばれているかということは、作品の主要な問題ではない。恋愛のいきさつ一般が人生の波瀾の中心事であると考えられている。従って、作者の腹に入って見ると、「その前夜」に描かれている恋愛の本質を「春の水」のマリヤの気まぐれな恋愛と比べて見た場合、どちらが社会的な価値において高いという、はっきりした選択と主張はされていない。
あれを書き、これも書きという風にツルゲーネフは、自分の気分に応じてそれぞれ全く相反する「父と子」