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ツルゲーネフのいきかた
ツルゲーネフの生きかた
宮本 百合子
「文化集団」1934(昭和9)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,189 字 · 22 页
女というものをも、トルストイはツルゲーネフの考えていたように、純情、献身、堅忍と勇気とに恵まれたもの、その気まぐれ、薄情、多情さえ男にとって美しい激情的な存在という風に理想化して理解してはいない。もっと動物的に、或は愚劣に、或は恐ろしく、美醜をかねそなえた具体的な人間の女性として把握している。
水っぽいサロン的常識の埒を越えないツルゲーネフのそういう考え方にトルストイが癇癪を爆発させたであろう様子を想像すると、思わず破顔さえ覚えるのである。トルストイは、食いあき飲みあき懶怠にあきた上流社会の美しく装った男女が、馬車の中で、花園でする恋愛に一つの社会的腐敗の悪臭をかぎ出している。持参金つきの商略的結婚制度に、外見上の一夫一婦制に、大きな虚偽を見出している。
これらの、本質においては極めて健康なそして尊敬すべきそれらの懐疑を発展させて、解決させるに当って、トルストイは自身の大地主、大貴族的生活からの考えかたや感情に制約され、すべてを人類の霊魂の高まりによって解決しようとした。そして宗教へささり込んだ。トルストイは、自身の全存在をかけて雄渾に且つ悲劇的に自身の懐疑ととりくみ、そのことに彼流の矜恃をも感じているのである。