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ツルゲーネフのいきかた
ツルゲーネフの生きかた
宮本 百合子
「文化集団」1934(昭和9)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,189 字 · 22 页
ツルゲーネフが、自身の生活はなまあたたかく動揺のないところに引こめておいて、傍観的な人生に突っこみの足りない態度で小説を書いて行くその生きかたが、トルストイには全く気にくわなかったのであろう。
ガルシンはこの二人の喧嘩についてこう書いた。「ツルゲーネフの言によると、トルストイがツルゲーネフのことで一番癪にさわっていたのは、極めて冷静に文学的著作に従事しているその態度であった。」そして、「ツルゲーネフが善事に向って進むという、その善良なるものを絶対に信じなかったのだ」と。ツルゲーネフがガルシンに云った冷静という言葉の内容、トルストイが信じなかった善事というものの内容は、トルストイの側から見れば、大体以上のような性質のものとして映っていたのであったろうと推察されるのである。
後年チェホフが、たしかクニッペルにあてた手紙か何かの中で、ツルゲーネフは俗人であるという意味のことを云っているのを思い出す。
「その前夜」や「処女地」のような作品の主題と、作者としての生活的実践との間にある深刻で鋭い社会的なギャップを、ツルゲーネフが或る種の通俗的な作家たちのするように苦悶なく滑って行っているところを見ると、チェホフの短い評言は、ツルゲーネフにとって痛い一本のモリであろう。