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ディズニーのひととさくひん

ディズニーの人と作品

中谷 宇吉郎

「週刊朝日」1955(昭和30)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,273 字 · 13 页

青空文庫

一秒二十四こまで撮ったネガの一つを、二回ずつ焼き付けると、一秒に十二しか進行しない。すなわちものの動きが、半分の速さになって映写される。二回一回と焼くと、三分の二の速度になる。実行するとなると、これはたいへん面倒なことであるが、ディズニー映画では、至るところに、この手法が用いられている。『水鳥の生態』の終りに近いところで、ある鶴の一種が、ラプソディのリズムにのって、悠々と飛ぶところがある。画面いっぱいに羽を拡げて、空中の一点にとまったまま、天女の羽衣の舞いのように、静かに羽を動かしている。それにラプソディの伴奏が、ぴったりと合っている。科学の極致が、文学では達しられない、新しい幻想の世界に、われわれを導いてくれる。これなども、空間と時間とを、音楽に合わせて、自由に変化させるという技術によって、到達されたものである。もっとも鶴の飛行自身に、だいたいこれに似かよったリズムがあり、音楽の方も少し妥協させてあるから、こういう夢幻の世界が作り出せたのであろう。

ディズニーは、詩人の心と、企業家の腕と、科学者の頭と、それに本文では割愛したが、温かい人間愛と、普通には両立しない各種の才能を兼ね備えた、稀な天才の一人である。