轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ドミノのおつげ

ドミノのお告げ

久坂 葉子

「VIKING 17号」1950(昭和25)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,713 字 · 42 页

青空文庫

その時、母が父の部屋にはいったらしく、二人の会話がきこえて来ました。私のことなのです。

「雪子は今ごはんのようですね。九時になるというのに」

「何ですかねえ、夕方から出ちまって、家のことったら何一つしようとしないで」

「あなたがさせないからいけないのです」

「申し訳ございません」

母は父の背中をさすっているらしく、時折苦しそうなその父の声と、母のものうそうな声にまじって、つむぎの丹前のすれ合う音がします。私には両親の話す言葉が、自分のことだとさえも感じられないくらいなのです。それよりも私は、今日父に五〇グラムの輸血をしてあげて、代償にもらった五〇〇円のそのお金で買って来た李朝の皿のことで一杯でした。薬も注射も三時間しか効果がつづかず、それも度々やるためにだんだん効力が失われて来て、輸血でもするほかによい方法はないという一人の医師の言葉に従って、私の血を父の血管に入れました。父は母に財布を取りに行かせ、黙って百円紙幣を五枚、私の前に並べたのです。私も一言も云わないでそれをもらうと家を出たのでした。夕方のうすら寒い街を歩きました。そして、ほしかったその皿を買い、残りでコーヒーをのみ、高級煙草も吸いました。