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ドミノのおつげ
ドミノのお告げ
久坂 葉子
「VIKING 17号」1950(昭和25)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,713 字 · 42 页
穢れた食器をがちゃがちゃ手荒く洗って、ぞんざいに戸棚の中へかさねて置くと、自分の部屋へ戻って新聞紙のつつみをほどきました。陶器のそのとろっとした肌を頬につけてしばらくそれを愛撫しました。
「また、姉様の隠居趣味。食うに困ってるのに。そんなもの買うくらいなら牛肉でも買ってくりゃいいんだ」
はいって来た弟の信二郎は、いきなり皿を爪はじきしました。
「いけない。こわれるじゃないの」
私はそれを本棚の上に置きました。自分の「血」が「皿」になったことが、私には滑稽と思われて来ました。皿の包みを大事に抱きながら一人で夜の街を歩いたことが愉しいことに思い出されます。隠居趣味? 信二郎の云うのは非難なのでしょうか。嘲弄の気持からでしょうか。私には羨望だろうと思われました。自分の逃げ場所をこんなところに求めるところは、父と私のたった一つの共通した点でありました。戦争のはじまるもっと前、父は私を連れて、京都の古物屋へよく行きました。そして、茶碗や、壺や鉄びんなどを買って来て、二階の父の部屋に並べました。日本に二つしかないという、鶏冠壺は、それ等のなかで、一番大事にしておりましたけれど、戦火の下に、やはり他のものと一緒になくなっておりました。