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バルザックについてのノート
バルザックについてのノート
宮本 百合子
「歌声よ、おこれ」解放社、1947(昭和22)年8月発行
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,421 字 · 9 页
我々の世紀(十九世紀)はその第二段の必然帰結たる国民権(普選)を築こうと試みているのである。」
「一八四〇年(ルイ・フィリップ)のフランスとは如何なる国であろうか。」
「われわれにとって国家なんていうものは――」
すべてが完成されたと云われるこの時代に、すべての名誉も何も金! 金! 金! そこで極端な辛辣さが知性にびまんした。節操を失った。
ジャン・ジャック・ルソーを嘲弄し、サン・シモンをせせら笑う。何ものも信じない。幻滅を通った七月革命後のフランスの堕落とバルザック。こういう彼が現代において「秩序ある社会を希望する人々」としてカトリーヌをあげている。
そういう社会をのぞみ、信義をもち得る社会を求める心からバルザックは反対党――共和党に対して王党となったのか。
ユーゴー(一八〇二―一八八五)は共和党であった。(一八四六年頃)そしてナポレオン三世の帝政布告に抗し二十年間亡命、一八七〇年普仏戦争による帝政崩壊後かえる。「レ・ミゼラブル」は亡命中。
バルザックとユーゴーとの大きい差は、ユーゴーは二つの対立物から更に一つを生み出す能力をもっていたが(ゴーヴァン)、バルザックは、二者のうち、そのいずれかといつも対立においてものを見た。