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バルザックにたいするひょうか
バルザックに対する評価
宮本 百合子
「文学古典の再認識」芸術遺産研究会編、現代文化社、1935(昭和10)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,904 字 · 62 页
特に一八三一年、派手で鳴らしたカストリィ公爵夫人と激しい恋に陥ってからの波瀾多い五年間、バルザックの大胆不敵なやりくり生活は、兄を信頼しきっている妹をも恐怖させる程度に達した模様である。
出版書肆からの手形の書きかえでやっとやりくっているのに、バルザックは馬を数頭、馬車を二台も買って、自分は金ボタンのついた青い服を着、貴族風な長髪を調え、手には当時すべての漫画に添えて描かれたトルコ玉を鏤めた有名な杖をもち、貴族街サン・ジェルマンなどを歩く時には、イギリス風に仕立てた侍僮を背後に引き倶して歩くという有様であった。
性格的にはベルニィ夫人と全く反対のカストリィ公爵夫人の気に入るために、バルザックは数県から王党派代議士として立候補し、いずれも落選した。所謂高貴な骨董趣味に溺れて莫大な蒐集をはじめたり、邸宅を構えようとしたり。総ては金のいることばかりである。
この期間は、今日になって眺めるとバルザックのさして永くない生涯にとって、最も急テムポに彼の政治上の王党派的傾向とカソリック精神とが堅められた時代であった。然しながら、この頽廃的で奢侈な公爵夫人との恋愛とその感化によって恐るべき浪費をし、益々王党派、カソリック的傾向を強固にされながら、而も一方においてはその金のやりくりともぎ取りのため、壮年に達したバルザック