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バルザックにたいするひょうか

バルザックに対する評価

宮本 百合子

「文学古典の再認識」芸術遺産研究会編、現代文化社、1935(昭和10)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,904 字 · 62 页

青空文庫

それは、バルザックが一八三〇年代からフランス文学に咲き乱れていた絢爛たるロマンチシズム文学の只中にあって、全く一人の例外者、ユーゴオなどに云わせると、文体もきまらない才能のない野人として、寧ろ除け者のようなとり扱いを受けていたことである。

知られているとおり、フランスのロマンチスト達は、人類の大きい理想をめざして闘われた筈の大革命が、ブルジョア階級の擡頭によって、成上り者の専断、金銭万能の社会となった現実の「若き失望のカリカチュア」に反撥して、芸術運動の中に、ブルジョア共によって壊たれた自由、平等、友愛の焔を守ろうとした人々である。「ゴオチェの美しい言葉をかりて云えば」「焔の如く燃える人々」が、「灰色がかった人」の没趣味で、俗悪で、生気ない金銭支配への屈伏に反逆したのであった。

これらの人々は、ゲェテ、ホフマン、バイロンやスコット等の作品からも強く影響され、当時の社会の現実生活ではブルジョア共によって軽蔑され、価値を認められない存在であった未開人、民衆、子供や女や詩人というものの美と善とをも、「ありのままの自然」の姿においてその地方色の鮮やかさにおいて、または歴史的精美さにおいて力強く各自の芸術の中に活かそうと努力した。