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フシギなおんな

フシギな女

坂口 安吾

「新潮 第四八巻第五号」1951(昭和26)年4月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,406 字 · 35 页

青空文庫

私がフシギな女、フシギな女、と云いふらしているのは、ちッとも女そのものをフシギがっているのではないのさ。どこに怪牛の化け者のようなフシギな女が実在しうるものですか。

女は柳ずしで休んでも、信用組合で金をひきだす時間だけを気にしているが、すでに現場が発見されて手が廻っているかも知れないということは全然気にかけていない。

また、洋品屋でお金を払うにも、十円札を六十二枚かぞえるのに十分間もかかり、なるべく長く時間を費して信用組合で金をひきだす時間まで持たせようとしているが、現場が発見されて手が廻るかも知れないことは全然気にかけていない。

だからフシギな女だと私は云うのです。しかし、私の言葉の裏を読めば、全然フシギじゃないじゃないか。どこにそんな怪牛のような、フシギな女がいるものか。要するに、彼女が気にしている九時半という時刻までは、決して現場が発見されないことを彼女は知っているのだ。だから、彼女は信用組合で金をひきだす時間以外は全く心配せず、ただ一途に、それのみ気にかけているだけさ。なぜ彼女はそれまで、現場が発見されないことを知っているか。共犯者は山口だからだ。