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フシギなおんな

フシギな女

坂口 安吾

「新潮 第四八巻第五号」1951(昭和26)年4月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,406 字 · 35 页

青空文庫

きわめて簡単明瞭な話じゃないか。

まだ犯人がつかまりもしないのに、犯人は山口と成子だと云えると思っているお前さんが大バカなのさ。文学者は素人タンテイではないのだから、ただ文学者の職分として心理分析によって山口と成子の犯行を確認しうる理由をもったがゆえに、文学的に表明してみただけの話であって、素人タンテイたるの功を誇ることとは意味がちがう。

私は先ず山口の手記に、成子の個性がないこと、アベコベに男の個性がありすぎることを指摘し、成子がしばしばゴミをすてに裏へでたこと、深夜に男が来ていたこと、成子が旦那の売上げを数えるのを見ていたこと等、彼の観察が男女共犯物盗り説の一点にのみ集中していることを指摘した。しかもこれらの目撃者は彼一人であって、他の誰も同じものを見ることができない底のものなのである。その他のことについては、彼の手記にはなんらの個性もないのである。そこで私は結論したのだ。

「しかし男であるかは探す必要がない。太田成子を追えばタクサンだ。彼女を捕えれば、男が誰であったかは自然に分るであろう」

云うまでもなく男は山口だと云う意味だ。そして、その次にフシギな女について詳説したのは、なぜ男が山口であるかということを、補足説明するためのことである。