轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
フランセスのかお
フランセスの顔
有島 武郎
「新家庭 第一巻第一号」玄文社、1916(大正5)年3月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,859 字 · 24 页
よく肥った猫が一匹人おじもせずにうずくまって草の間に惜しげもなく流れこぼれた牛の乳をなめていた。
台所口をぬけるとむっとするほどむれ立った薔薇の香りが一時に私を襲ってきた。感謝祭に来た時には荊棘の迷路であった十坪ほどの地面が今は隙間もなく花に埋まって、夏の日の光の中でいちばん麗しい光がそれを押し包んでいた。私は自分の醜さを恥じながらその側を通った。ふと薔薇の花がたわわに動いた。見返る私の眼にフランセスの顔が映った。彼女は薔薇といっしょになってほほえんでいた。
腕にかけた経木籃から摘み取った花をこぼしこぼしフランセスの駈け出す後に私も従った。跣足になった肉づきの恰好な彼女の脚は、木柵の横木を軽々と飛び越して林檎畑にはいって行った。私は彼女の飛び越えた所にひとかたまり落ち散った花を、気ぜわしく拾い上げた。見るとファニーは安楽椅子に仰向きかげんに座を占めた母に抱きついて処きらわず続けさまに接吻していた。蜘の巣にでも悩まされたように母が娘を振り離そうとするのを、スカルキャップを被った小柄な父は、読みかけていた新聞紙をかいやって鉄縁の眼鏡越しに驚いて眺めていた。