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ボニンとうものがたり
ボニン島物語
久生 十蘭
「文藝春秋」1954(昭和29)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,772 字 · 41 页
地頭も島主もいらぬ。旦那も船頭も邪魔になる。この島の働きは、一切平等にやってもらいたいといいだした。
一応、尤もな言い分だから、言いなりにしておさめたが、それも、長くはつづかなかった。舟子の一人が、ペール島の異国人のすることを見てきて、みなを焚きつけた。異国人のすることも、いいお手本にはならなかった。ペラホの土人の女を連れてきて、一人が三人ぐらいずつ家内にして、それらに働かせて、おのれらは楽をして食っている。それをこの島でやろうというわけです。
そこにいる大将、お船頭、上乗り、お舵……そんなてあいは長いあいだ旦那面で楽をしてきた。今日から、われわれが旦那になる。お前らは名子か手間取りの分際にひきさがって、汗を流して働け。その代り、一年交代ということにしてやる。という言い草です。もとより黙ってはいなかったが、こちらは五人で、向うは五十人余り、戦争にならないから降参した。
旦那になった名子どもは、わずかな平地を争って、飽くことなく自分のほうへ取りこもうとする。やるまいとする。垣根をつくる。それを壊しにくる。勾配の早いやつは、伝馬で小島におし渡って、そこを自分の領分にする。